プリン体や尿酸値という言葉を聞いたことのある人は少なくないはずです。しかしこれらが一体何なのか、そして健康にどのような影響を及ぼすのかについてはよくわからないという人もいます。

糖質制限をベースにしたダイエットのやり方を研究している当サイトとしても、糖質制限をすると尿酸値が上がる…という話を目にします。

実際にどのような理由からこう言われるのか、今回は、このプリン体や尿酸値と糖質制限の関係についてみてみたいと思います。

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ではまずは尿酸値の前に、プリン体とは何なのかについて考えてみましょう。

プリン体は細胞の核を構成する核酸主成分です。※難しい場合は飛ばし読みで可。

体の中には無数の細胞が存在します。それに伴い、人間の体の中にはプリン体も無数に存在しています。プリン体はDNAやRNAに関係していますし、筋肉が使われるときのエネルギー伝達物質の原料としてもつかわれます。そのため体内において非常に重要な役割を果たしているのです。

プリン体の8割は体内で作られており、残りの2割は食べ物によって摂取されます。このようにほとんどのプリン体は体内で作られているものの、食事制限によるプリン体量の調整には大きな効果があります。

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では次にプリン体と尿酸の関係について考慮してみましょう。

ご存じのとおり、細胞は古くなると壊れ、その代わりに新しいものが作られます。このとき壊れた細胞に含まれているプリン体は肝臓に運ばれ、そこで分解されます。そして分解される段階でプリン体は尿酸を作り出します

しかしその濃度が高くなると血液の中で結晶となり、関節に蓄積してしまうのです。この状態に反応するのが白血球です。白血球は尿酸の結晶を異物とみなして攻撃します。そしてこのときに激しい痛みが生じるようになり、いわゆる痛風という病気が発症してしまうのです。また尿酸は腎臓で結晶化することもあり、このような場合は尿路結石を生じさせたリ腎障害をもたらすことがあります。

このような状況により、体内でプリン体を必要以上に増やすことは大変危険なのです。

こういったメカニズムになりますが、糖質制限ダイエットを行っている人も尿酸値が高くなってしまうことがあります。糖質制限ダイエットは食べる量を減らすことな脂肪を落としていくことのできるダイエット法であるために、多くの人から人気のあるものです。

なぜこのダイエット法は尿酸値を高くする危険性を秘めているのでしょうか?糖質制限ダイエットと尿酸値の関係について見ていくことにしましょう。

糖質制限ダイエットと尿酸値の関係

糖質制限中の食べ物はプリン体にも注意

糖質制限ダイエットは糖質の摂取量を少なくし、身体を細くするというものです。食べ物によって摂取された糖質は血液中に取り込まれます。そしてそれらはまずエネルギーに変換されるわけですが、余った糖質はインシュリンによって脂肪に変換されてしまいます。この状況が肥満をもたらすという事は何度も説明している所です。

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こうした流れを回避するためにエネルギー生成のために必要な量の糖質のみを摂取し、それ以上の糖質を摂取しないというのが糖質制限ダイエットなのです。

しかしこのダイエット法は糖の摂取量を制限しなければならないものの、その他のものは好きなだけ食べられるというメリットが広く謳われています。もちろん食べ過ぎはカロリーの過剰摂取をもたらすために、肥満につながります。そのためいくら糖質の過剰摂取以外は許されてるからといって、必要以上のものを食べることは避けるべきです。

そして注目すべき点として、糖質制限ダイエットを行っているときは筋肉が弱ることがあります。このダイエットを行っている期間は糖質の摂取量が限られているために、エネルギーの生成量も少なくなります。そのため運動が苦に感じられることがあるのです。このような理由により運動不足に陥り、筋肉を鍛える機会を逸してしまうことがあります。こうしたことがないよう、運動するときなどは例外的に糖質を摂取して必要な量のエネルギーが生成できる状況を作るようにしたリ、肉や魚を意識して食べて筋肉を維持することが勧められています。

ここで見落とされがちなのが肉や魚に含まれているプリン体の量です。これらのものはプリン体が多く含まれている食材として知られています。とりわけレバー、エビ、イワシ、そしてカツオなどにはたくさんのプリン体が含まれています。これらの食材には糖質がほとんど含まれておらず、筋肉を強めるタンパク質が豊富に含まれています。そのため糖質制限ダイエット中に食べられることの多い食材です。

しかしこうしたものをたくさん食べることによって、プリン体が増加して尿酸値が高くなってしまうのです。

運動習慣を作ることの重要性

先にも述べたように、プリン体の2割は食べ物によって摂取されますが、8割は体内で作られます。そして意外なことかもしれませんが、ある種の運動を行うとプリン体は作られやすくなります。運動は大きく分けると有酸素運動と無酸素運動に分類されます。そして無酸素運動を行うと体内のエネルギーは急激に失われることになり、その結果、酸素の供給が間に合わなくなります。このような状況に陥ると筋肉中にある「ATP」という物質が分解され、エネルギーが作り出されます。そしてこの過程においてプリン体が増加してしまうのです。その結果、尿酸値は急激に上昇します。

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私たちが行う無酸素運動で身近なものは筋トレです。

先にも触れましたが糖質制限ダイエット中は筋肉が弱くなることがあります。そのため筋トレを行うことが勧められています。また筋トレは自宅でも行うことができますし、短時間でも効果を得ることができます。このような理由ゆえに、糖質制限ダイエットを行っている人が積極的に行う運動でもあるのです。結果、実践している人の体内でプリン体が増えてしまい、それに伴って尿酸値もアップすることがあるのです。

また激しい筋トレを行うと体内で乳酸が作り出されます。乳酸が作られると腎臓からの尿酸の排泄が妨げられてしまいます。そのため糖質制限ダイエット中に激しい筋トレを行う人は、乳酸が作用して尿酸値が高くなることも考えられます。

糖質制限中のプリン体、尿酸値対応策

では糖質制限ダイエット中に尿酸値をアップさせないためにはどのようなことに注意するべきなのか、その点について考えてみましょう。

プリン体の少ない食べ物

まず食べ物に注意することが必要です。プリン体の過剰摂取は非常に危険ですが、冒頭でも述べたようにプリン体は細胞の核を形成しているために、無くてはならない存在です。そこで必要な量のプリン体を摂取し、それ以上は摂取しないように心がけるようにします。プリン体の一日の摂取量は400ミリグラムが目安とされています。この数字を思いに留め、何を食べるかを決定することができます。下記の情報は食べ物100グラムに含まれるプリン体の含有量です。

食べ物100グラムに含まれるプリン体の含有量
300ミリグラム以上 鶏レバー、あん肝、白子、いわしの干物、かつお節、煮干し、干しエビ、しらす干し
200ミリグラム以上300ミリグラム以下 豚レバー、牛レバー、カツオ、真イワシ、アジの干物
50ミリグラム以上100ミリグラム以下 豚肉、牛タン、ベーコン、ホタテ、トマト、ホウレン草、カリフラワー
50ミリグラム以下 コンビーフ、かまぼこ、ちくわ、さつま揚げ、豆腐、豆乳、牛乳、チーズ、バター、卵、海藻

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もちろん上記に含まれていない食材にもプリン体が含まれていることがありますが、私たちが日常生活でよく口にするような食材は上記で述べたものでしょう。そのためこの情報を参考にし、糖質制限ダイエット中に食すものを決定することができます。

とりわけプリン体が200ミリグラム以上含まれている食べ物は「プリン体が多い」と認識されています。そのため尿酸値が高い人や糖質制限ダイエット中に尿酸値が高くなってしまった人は、100グラム中にプリン体が200ミリグラム以上含まれている食材に注意するべきです。

しかしプリン体を気にするがあまり、食事にシビアになりすぎるとストレスを抱えてしまいます。慣れてくれば今、何を食べたら良いのか悪いのか分かってくるようになりますが、初心者などには少々つらい部分かもしれません。

そもそも糖質制限ダイエットは糖質の摂取量に注意していれば、その他に大きな制限を加える必要がないことで人気のダイエット法です。そのため体内でのプリン体の増加によって食事が制限されてしまうのであれば、糖質制限ダイエットの最大のメリットが失われてしまうのです。

そこでプリン体が有している性質を上手く利用することができます。プリン体は水に溶ける性質を有しています。そのため煮たり茹でたりすることで食材に含まれているプリン体を約3分の2まで減らすことができるのです。プリン体を多く含むものを食べたいと感じた場合、煮る、茹でるという調理法で安全に食すことができるのです。

野菜を食べる

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糖質制限ダイエット中に野菜を意識して食べることも非常に重要です。

なぜなら野菜にはビタミンやミネラルが豊富に含まれており、これらが尿をアルカリ性にしてくれるからです。

また野菜には食物繊維が含まれていますが、これには腸内でのプリン体の吸収を抑える働きがあります。そのため野菜は非常に重要な食材なのです。一日の摂取量の目安は350グラムで、緑黄色野菜と淡色野菜を組み合わせて摂取することが勧められています。350グラムというのは少し多いように思えるかもしれません。

野菜が苦手であるという人もおられることでしょう。尿をアルカリ性に傾けてくれるのは野菜だけではありません。ヒジキやわかめ、そして昆布などの海藻にもそのような作用があります。そのため野菜と海藻を組み合わせて食べることもお勧めです。

定期的な水分補給

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尿酸の排出を促すためには、排尿を促すことが必要です。そのためにできることは水分補給です。もちろん糖質制限ダイエット中は甘い飲み物を飲むことはできません。そのため水を定期的に飲むように心がけます。目安としては一日に2リットルの水を飲むようにします。

また糖質の含まれていないお茶を飲むこともできます。お茶には利尿作用があるために、尿酸値を下げることに貢献します。

運動を工夫する

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先にも述べたように、運動には有酸素運動と無酸素運動があり、無酸素運動はプリン体の増加を招きます。そのような状況を防ぐためには激しい筋トレではなく、有酸素運動も行うように心がけるべきです。よく知られている有酸素運動にはウォーキング、サイクリング、そして水泳などがあります。これらの運動には筋トレほど筋肉を発達させる効果はありませんが、筋肉強化に貢献することは間違いありません。そして有酸素運動は脂肪を燃焼させる効果があるために、ダイエットを促します。

個人的には筋トレはボディメイクという点でも非常に優れていますのでおすすめです。いきなり重たい重量を上げることはできないと思いますので心配はないですが、激しい筋トレ、過剰な糖質制限を同時に行うことは危険と知っておいて下さい。怪我や体調不良が結果的に一番デブってしまうとも思いますし。

筋トレは自宅で行うことができ、さらに毎日行えば一回の筋トレ時間が短かくても効果を見ることができます。それに対して有酸素運動はある程度の時間が必要ですし、運動するための場所も限られています。そのためある人にとっては容易に行えることではないかもしれません。しかし尿酸値を上げずに糖質制限ダイエットを行うためには、運動に対する調整も必要なのです。

糖質制限ダイエットで尿酸値が下がる人

これまで糖質制限ダイエットを行うと尿酸値が上がる仕組みについて考えてきました。

しかし逆の状況も起こりえます。つまり糖質制限ダイエットを行うと尿酸値が下がる人もいるのです。これには中性脂肪の存在が大きく関係しています。中性脂肪が増えると遊離脂肪酸という物質が大量に分泌されます。遊離脂肪酸は血液によって肝臓に運ばれます。そしてこの物質は尿酸値を上昇させるプリン体の代謝を促すのです。そのため中性脂肪によって肥満が生じている人の中には、尿酸値が高い人がいるのです。

しかし糖質制限ダイエットを行い、中性脂肪が減ったという人がいます。このような人は体内で発生する遊離脂肪酸の量が減ってきます。その結果、尿酸を作り出すプリン体の量も少なくなるのです。

ストレスを抱えずにダイエットを行う

糖質制限ダイエットはストレスを抱えずに行えるダイエット法として知られていますが、その過程で尿酸値がアップしてしまうことがあるのは事実です。そのため糖質の摂取量に注意するだけではなく、尿酸値を上げないようにするために食生活に制限を加えたり、運動の仕方を工夫しなければなりません。

こうしたことを考えると、大きなストレスや絶望感を感じることがあるかもしれません。しかしこれまで考えてきたように、尿酸値を上げないようにするための生活は決して難しいものではありません。ちょっとした点に気をつけて生活することで、尿酸値を上げることなく身体を細くすることができるのです。

またダイエットによって中性脂肪が減ってくれば尿酸値が下がるために、その後は食生活や運動に関する制限を解くことが可能です。こうした点を思いの留め、糖質制限ダイエットに励むことができます。しかし尿酸値が極端に上がった場合などは医師に相談するべきです。冒頭でも考えたように尿酸の蓄積は痛風などの病気を引き起こすために、早めに対処することが必要です。