突然の疲労感や吐き気、そして嘔吐に襲われた経験があるでしょうか?このような症状は様々な原因で引き起こされることがあります。

たとえば気温が激しく変化する状況に身を置いたり、激しい運動を行った後に疲労感や吐き気を感じることがあります。そのため中にはこれらの症状は頻繁に生じ得るものだと考える人もいます。

しかしこれが代謝性アシドーシスによって引き起こされている場合、早急に対処する必要があります。代謝性アシドーシスとはあまり聞き慣れない名前かもしれませんが、この症状を放っておくことは大変危険です。

重度の代謝性アシドーシスは極度の脱力感や眠気を生じさせ、次第に意識がもうろうとしてきます。そして強い吐き気を催すようになり、血圧が低下します。その後昏睡状態に陥り、死に至ることもあるのです。

では代謝性アシドーシスはどのような原因によって引き起こされるのでしょうか?この症状を予防したり、改善する方法はあるのでしょうか?これらの点について一般的な見解を整理しましたので参考にしてみてください。

代謝性アシドーシスは体が酸化すること

アルカリ性酸性

液体の酸性、そしてアルカリ性を示す単位はpH(ペーハー)です。7pHを下回るものは酸性、7pHを上回るものはアルカリ性、そして7pH、もしくはその周辺の数値である場合は中性となります。

人間の体の中を流れる血液は7.4pHに保たれています。そしてこの数値を下回る状況を作り出し、血液を酸性にしようとする働きがアシドーシスというわけです。

人の体は呼吸数が少なくなると酸性に傾きます。なぜなら高濃度の炭酸ガスである二酸化炭素が体内からスムーズに排出できなくなるからです。しかし体が酸性に傾く原因は他にも存在します。

体内では栄養素の代謝によって酸が作り出されますが、正常な体はそれを上手く排出します。何らかの理由でそれがスムーズに排出できなくなると血液は酸性に傾きます。

加えて体の中には体内で生じた酸を中和させるために、アルカリ性物質を生成する器官が存在します。そしてこのアルカリ性物質が必要以上に体外に排出される場合も、体が酸性に傾いてしまうのです。

このように呼吸が乱れること以外の要因で引き起こされる体の酸化を代謝性アシドーシスと言います。血液のpHを一定に保つことに大きく関わっているのが腎臓、そして血液そのものです。

これらには次のような役割があります。

腎臓

余分な酸を尿として排出します。また酸を中和する重炭素イオンを血液に供給し、血液の酸化を防ぐ役割を担っています。

血液

血液には少量の酸や塩基を加えてもpHを一定に保つ緩衝作用があります。

代謝性アシドーシスが生じる場合、このどちらかに問題がある可能性が高いと言えます。では代謝性アシドーシスが引き起こされる要因についてもう少し詳しく見ていくことにしましょう。

代謝性アシドーシスが生じる原因

薬のイメージ

多くの場合、以下のことが原因で代謝性アシドーシスが生じます。

乳酸の蓄積

何らかの原因で乳酸が体内に蓄積し、体が酸性に傾くことがあります。この症状は突然起こることが多く、放っておくと数時間で昏睡状態に陥ります。

肝機能障害や腎機能障害を抱える人に使用されている薬の中には乳酸を増やす作用を有するものが存在します。これらの薬が原因で代謝性アシドーシスが生じた場合、素人では症状を和らげることはできません。そのためすぐに病院へ向かうべきです。また薬の使用によって体に何らかの変化が見られた場合、そのことをすぐに医師に相談するなら代謝性アシドーシスを予防することができます。

腎不全

1つ前の項目でも述べましたが、腎臓は代謝性アシドーシスに大きく関わる臓器です。血液はこの臓器を通してろ過され、乳酸、リン酸、そして硫酸などの酸性物質が尿として体外に排出されます。

また酸を中和する重炭素イオンを血液に供給する役割も果たしているために、腎臓の働きがスムーズであれば体のphはふさわしい数値に保たれます。

当然のことながら腎臓の機能が低下するとこれらの働きが全て滞るために、血液は酸性に傾きます。その結果、代謝性アシドーシスが引き起こされるのです。

慢性的な腎不全の場合、血液透析が必要となります。この過程で余分な酸化物質は除去されます。

糖尿病

糖尿病も代謝性アシドーシスを引き起こすことがあります。この病気はインシュリンの分泌が不足することで生じるものです。

そのため体は糖質からエネルギーを効率よく作り出すことができません。この状態に陥るとたんぱく質や脂質が分解され、エネルギーが作り出されます。そしてこのとき、エネルギーと一緒にケトン体という物質が発生します。

ケトン体は血液を酸性に傾ける作用を有しており、これが原因で代謝性アシドーシスが生じることがあるのです。

糖尿病による代謝性アシドーシスの改善も素人では不可能であるために、医師に相談する必要があります。多くの場合、インスリン、そして輸液の投与によってケトン体の発生を防ぎ、代謝性アシドーシスを抑えます。

下痢

意外なことかもしれませんが、下痢も代謝性アシドーシスを引き起こすことがあります。先にも少し触れたように、体内では栄養素の代謝によって酸が作り出されます。

そして体の器官のいくつかはそこで発生した酸性物質を中和する働きを担っており、ph値は正常に保たれています。先ほど腎臓と血液の働きについて述べましたが、腸の消化液にもそのような働きがあることがわかっています。

しかし下痢をすると消化液が体内から流れ出てしまうために、アルカリ性物質が少なくなってしまうのです。その結果、代謝性アシドーシスが引き起こされることがあります。

一時的な下痢で生じた代謝性アシドーシスであれば輸液の投与で症状は改善されます。しかし症状が重い場合、輸液と一緒に重炭酸塩も投与します。もちろんこれらは一時的な対処法にすぎません。そのため下痢の原因を追究し、治療するべきです。

呼吸性アシドーシスとの混同は危険

二酸化炭素が体内に多く存在するようになると体は酸性に傾きます。

そして代謝性アシドーシスと同じ症状が現れます。これは呼吸性アシドーシスと呼ばれるもので、その原因は代謝性アシドーシスとは異なります。

多くの場合、呼吸性アシドーシスは呼吸器疾患、神経筋肉疾患、そして循環器疾患などが原因で発祥します。そのため対処方は代謝性アシドーシスとは異なるのです。

しかし症状が似ているために、この2つを混同してしまうことがあります。突然の疲労感や吐き気、そして嘔吐が生じた場合はその原因を突き止め、代謝性アシドーシスなのか、それとも呼吸性アシドーシスなのかをはっきりさせる必要があります。

早めの対処が大切

代謝性アシドーシスは症状が軽いこともあれば、重いこともあります。

しかしその原因は腎臓や肝臓、そして血液などである場合が多く、症状が出た場合は慎重に行動するべきです。

これらの器官は体の中でも重要な役割を果たしており、何らかの問題が生じた場合は直ちに医師の診察を受けるべきです。とりわけ代謝性アシドーシスの初期症状は過呼吸や疲れなどであるために、軽視されがちです。また自己判断が難しいとあり、そのまま放置されやすいものでもあります。

もともと腎臓や肝臓などの臓器に問題がある人は、定期的な健康診断を行うことがお勧めです。そのようにすることで代謝性アシドーシスの予防、もしくは早期発見が可能となるからです。

また健康な人であっても油断することなく、体調の変化を感じたらすぐに医師に相談すべきです。